「障害者制度改革について考える地域フォーラム in ふくおか」

私たちがつくる新しい障害者制度
〜障害者制度改革の推進のための基本的な方向〜

参加報告書



 平成23年2月12日午後1時から4時30分まで、 クローバープラザ アリーナ棟・大ホール(県障害者会館)において 標記の会議が行われ、秋吉・佐藤・森本の3名が参加しました。 当日は、障団連の仲間20名と一緒に車椅子6台が乗車できる市営バスで ウェル戸畑から会場まで往復しましたが、 帰路、積雪のため高速道路を使用できず渋滞に巻き込まれ 6時期着予定が8時になるなど、大変な悪天候の中での参加となりました。



1.
会議の全体的運営では、はじめに基調提案が行われました。

障がい者制度改革推進会議委員、
国立社会保障・人口問題研究所情報調査分析部長
勝又 幸子 氏

より取り組みの現状と課題について報告を受け、 その後、4人のシンポジストがそれぞれの立場から報告をし、 会場参加者からの意見も交え総合討論が行われました。 4人の立場については、

障がい者制度改革推進会議委員、
(社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合合常務理事
新谷 友良 氏

(社)福岡県精神障害者福祉会連合会会長
一木 猛 氏

(社)福岡県手をつなぐ育成会会長
稲吉 禎子 氏

(特活)北九州自立生活センター代表
林 芳江 氏

それぞれの立場から意見提案があり、その後、会場から幅広い意見が述べられ 中身によっては勝又さんやシンポジストから見解が述べられるなど、 大変中身のある会議となり予定時間を少しオーバーして終了しました。


2.
 当日出された意見や現状報告のなかで、 特に印象に残った事柄について報告をしたいと思います。
 まず、勝又さんから述べられた国の検討内容や取り組みの現状報告については、 政権交代もあり従来の法律を作る際の審議会方式とは まったく異なる新しいやり方で、 障害当事者の団体役員や私のように学識経験者という立場の者も加え、 新たな法律の中身について検討するとともに、 今回福岡で開催されたような各県でそれぞれシンポジウムを開いていただき その意見も反映する進め方として取り組まれています。
 また、この内容についても障害者の権利条約という国連が定めた 障害者の権利をどのように保障するのかという国際的な考え方に基づき、 国連から指摘されている日本の障害者問題の改善内容について 国内法を整備するという大きな理念を 実現しなければならないということから取り組まれています。
 なお、国会の論議状況にも影響されますが、 障害者基本法については本年3月を目途に閣議決定をする方向性がなされており、 ひとつの山場を迎えていることについてまず理解をしてくださいとのことでした。


3.
 具体的に出された障害者の現状について 多くの意見がそれぞれの立場から述べられました。

(1)
 知的障害者の家族に関わることでは、 障害者自身が高齢化していること、 その親はさらに高齢化していることから、 例えば、親自身が老人施設に入居をした場合 残された知的障害者の現状の深刻さが報告されました。
知的障害のレベルによっても異なりますが、 重度の障害者では自分の食べるものを準備することもできないなど、 生活そのものもできないのに行政担当者はその厳しい現状を 見定めることもなく対応していることなど 今日の社会の仕組みではどうしてもカバーできていない実態が語られました。

(2)
 精神障害者の家族の立場からは、 知的障害者や身体障害者にはその障害を支える福祉法制があるのに対し、 精神障害者には福祉法すらなく社会からの支援を受けられない 障害者間の差別的現状があることが語られ、 是非今回の法案の中でそれらの改善も取り組んでいただきたいとの 強い意見が出されました。

(3)
 人工肛門などで暮らしている人から銭湯に行った時、 他の入浴者が事業者に対し、 「あのような者たちを一緒に入浴させないでくれ」との クレームがつくなど、社会の中での私たちに対する理解がなく、 差別的な扱いをされていることが報告されました。
 医学的には衛生管理上も全く問題がないとの現状なのに、 そのことが社会的に理解されていませんし、 例えば、他の病気で入院した時も医療関係者の介護で その対処方法が分からない人がいるなど、 その不十分な社会対応についても述べられました。

(4)
 民間病院の医師の立場から発言した人からは、 わたしたち医療関係者は病気をみているのではなく、 病気にかかった人間をみているとの観点からいろいろな問題を考えている、 そういう意味で障害者という人をどのように判断するのか。
 病気によっては症状が固定している人もいれば、 慢性期の症状が障害者だと現状では社会生活が 困難なほど大きな障害といえるような人でも、 医学的には急性期の患者であるため 障害者として認定を受けることのできない人にとって 今後作られる法律がそれらのものをカバーできるような 考え方について意見と質問が出されました。

(5)
 その他にも、さまざまな意見が出されましたが、 それらの詳細については資料にそれぞれの障害者団体の意見として 盛り込まれ中央の論議に反映されるよう取り組まれているとのことでした。


4.
 障北連からは秋吉会長が発言し、今日取り組まれている障害者に関わる 法律論議についてその方向性や国際的な障害者運動の流れから 大いに賛成であるとの態度表明がされました。
 しかし、法律だけができてもそれだけでは 決して障害者の権利を守ることはできないし、 社会の人々の意識も変えることもできない。 そのためには、障害者自らが社会に対し働きかける 障害者運動の重要性が語られました。
 その例として、長年労働運動に携わった会長自らの経験の中で、 労働者の基本的な権利を守る労働基準法ができ、 社会の中で運用されて何年の月日がたっているか是非思い出していただきたい。 そして、今日の社会の中で労働者の置かれている状況がどのようになっているのか その現状を正しく認識していただければ分かると思います。
 時間の関係で、細部のことを語ることはしませんでしたが、 大公のような意見を述べました。